2026年3月9日、衆議院予算委員会(集中審議)において国民民主党の田中健議員が質疑に立ちました。米国・イスラエルによるイラン攻撃で緊迫化する中東情勢と国際秩序の揺らぎ、ホルムズ海峡封鎖がもたらすエネルギー危機、冤罪救済のための再審法改正、そしてスポーツ産業の成長戦略まで、多岐にわたるテーマで政府の見解を問いただしました。
イラン情勢と国際秩序の行方
米国とイスラエルがイランを攻撃し、イランが報復。中東情勢が一気に緊迫化しました。イランはペルシャ湾で米国のタンカーを攻撃したと主張し、ホルムズ海峡(日本の原油輸入の大動脈)の封鎖も取り沙汰されています。フランスは空母を派遣、カナダは国際法の観点から米国を批判するなど、世界の主要国がそれぞれ立場を明確にしています。
田中議員は「戦後の国際秩序そのものが揺らいでいるのではないか」という問題意識を提起しました。ロシアによるウクライナ侵略に続き、国連安保理の決定に基づかない軍事行動が常態化していることを踏まえ、政府の基本認識を問いました。
自由で開かれた安定的な国際秩序は、今日大きく揺らいでいると認識をしております。必要なことは、我が国が自ら考えてハンドルを握り、長期的な目線を持ってどこに向かっていくのかを決めることだと考えております。
── 高市総理田中議員はさらに踏み込み、「国際秩序が弱体化しているのか維持されているのか」と問いました。高市総理は「国際法のルールを必ずしも尊重していない国」が安保理常任理事国にいること、北朝鮮制裁の監視委員会が一部常任理事国の反対で活動停止させられたことにも触れ、「国連そのものの機能が十分に発揮されないことによって秩序を失っている」と認めました。
「法の支配」を外交の柱としてきた日本にとって、安保理決議を伴わない軍事行動の常態化は望ましいかという質問に対し、高市総理は明確に「法の支配の観点から望ましいことだとは思いません」と答弁しました。
ロシアのウクライナ侵略に続き、国連安保理の決定に基づかない軍事行動が常態化。戦後の国際秩序は弱体化しており、「法の支配」を掲げる日本がこの変化にどう対応するかが問われている。
日本の外交的役割 ─ 各国はどう動いているか
田中議員は「日本は唯一の同盟国である米国を支持し続けるのか、それとも独自の外交仲介を行うのか」と迫りました。各国が明確に外交方針を打ち出す中、日本の姿が見えないことへの問題意識です。
| 国 | 対応 | 特徴 |
|---|---|---|
| フランス | 原子力空母シャルル・ド・ゴールを東地中海に派遣 | 軍事的関与 |
| カナダ | 「国際法と一致せず、国際秩序の失敗だ」と公式批判 | 法的立場の明確化 |
| 日本 | G7連携、個別首脳会談、UAE特使との協議 | 評価を留保 |
茂木外務大臣はG7外相会合の開催、カタール・オマーンとの個別協議など精力的な外交活動を報告。高市総理もドイツ・メルツ首相やカナダ・カーニー首相との会談、UAE特使との協議で邦人安全確保と石油安定供給を要請したことを明らかにしました。
フランスは空母を派遣し、カナダは外交で鎮静化を図っている。それぞれの国が自国の外交方針を明確に示しています。日本はどのような役割を果たすべきだと考えているのか。
田中議員はさらに、米国の軍事行動が国際法に合致しているかの評価が、重要影響事態法や存立危機事態の議論の大前提であると指摘。「評価を控える」姿勢では法的な議論すら始められないとして、国際法上の評価を早急に国民と国会に示すよう求めました。
エネルギー安全保障 ─ ナフサ危機と電気・ガス補助
石油を精製する過程で得られる液体で、プラスチック・合成繊維・医薬品などの原料となるエチレンを作るために使われます。自動車の部品、家電の筐体、食料品のパッケージ、医療用品など、私たちの暮らしのあらゆるところに関わっています。
田中議員は、出光興産がエチレン生産停止の可能性を取引先に通知したことを紹介。原油と違いナフサには十分な備蓄がなく、ホルムズ海峡が封鎖されれば20日程度で国内在庫が底をつく深刻なリスクを指摘しました。
封鎖
輸入停止
停止(約20日)
医療品に影響
田中議員がナフサ等の重要資源への対応策を問いましたが、赤澤経済産業大臣は「手元に資料がない」として具体的な回答を避けました。
電気・ガス代補助の延長問題
3月末で期限を迎える電気・ガス代補助金について、田中議員は暫定予算への盛り込みを提案しました。政府側は財政法30条や平成3年の与野党合意を根拠に慎重な姿勢を示しましたが、田中議員は暫定予算に盛り込めない法的根拠は存在しないと反論しました。
予備費1兆円では、前回の補正予算の電気ガス補助だけで5,000億円以上ですから、あっという間になくなります。さらに災害対応など他の用途も必要です。暫定予算に盛り込むことをご検討いただきたい。私たち野党は総理が言っていただければ協力します。
電気・ガス補助を暫定予算に盛り込めない法的根拠は存在しない。予備費(1兆円)では電気ガス補助だけで半分以上を消費するため、暫定予算での計上が合理的。国民民主党は協力を表明。
再審法改正 ─ 冤罪はなぜ救済されないのか
有罪が確定した裁判について、新しい証拠が見つかった場合などに「もう一度やり直す」制度です。冤罪(無実なのに有罪とされること)を救済するための最後の手段ですが、現在の法律にはルールが不十分な部分があり、裁判のやり直しが決まってもなかなか進まない問題があります。
再審法改正議連の一員として取り組んできた田中議員は、冤罪被害者の救済がなぜ遅れるのかという構造的な問題を追及しました。最大の壁は検察官の不服申立て(抗告)です。
再審請求
再審開始決定
抗告で阻止
審理が停止
裁判所が「裁判をやり直すべき」と決定しても、検察官が不服申立てをすると再審はストップします。田中議員は具体例を挙げてこの問題を示しました。
福井女子中学生事件
再審開始決定が検察の抗告で取り消され、結論まで13年を要した
袴田事件
検察官の抗告により再審開始が9年遅れた。静岡県の全自治体議会が改正を求める意見書を可決
犯人でない人を処罰するということはその人権を著しく侵害するものでございます。当然あってはならないことであり、また、再審制度が国家の面子を保つための制度ではないということも当然でございます。
── 高市総理高市総理は、検察官の抗告が手続き長期化の一因になっているとの指摘を認識していると答弁。しかし法制審議会の答申を重く受け止める立場も示しました。田中議員は、法制審の審議を主導したのは検察官が要職を占める法務省であること、200名近い刑事法研究者や元裁判官が懸念を表明していることを指摘し、「法制審の答申にだけ沿った法案提出」にならないよう強く求めました。
議員連盟では、証拠開示の権利化(検察が持つ証拠を開示する義務)と検察官抗告の禁止を盛り込んだ議員立法を既に提出済み。閣法との両立てで冤罪被害者を生まない制度を目指す。
スポーツ産業の成長戦略 ─ 「補助金」から「稼ぐ産業」へ
冬季五輪・WBC・ワールドカップとスポーツの祭典イヤーでありながら、日本のスポーツ産業化は遅れています。地域のクラブもスタジアムもアスリートも財源不足に苦しむ一方、海外の違法オンライン賭博サイトには年間数兆円もの国富が流出しています。
政府が掲げたスポーツ市場規模15兆円の目標は、コロナの影響で2025年から2030年に後ろ倒し。田中議員は目標達成のために、スポーツを「補助金に頼る活動」から「稼ぐ産業」へ転換するための具体策を提案しました。
スタジアム・アリーナを地域の核に
周辺の民間開発投資を促す税制優遇で、スタジアムを地域経済の起爆剤に
スポーツくじの抜本改革
25周年を迎えるtoto・WINNERの対象競技拡大と収益のスポーツへの再投資
高市総理はスタジアム・アリーナが「定期的に数千人から数万人を集める集客施設」として地域活性化の潜在力があると認め、地域未来投資促進税制などの支援継続を表明しました。