📌 注目ポイント
- 農業者の所得向上を軸に、直接支払い制度の整理・拡充や水田機能維持の支援を推進します。
- 食料自給率向上のため必要な農地面積目標を明示し、田畑輪換やスマート農業の導入も支援します。
- 多様な農業者の育成や地域資源の活用により、持続可能で魅力ある農業・農村づくりを目指します。
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農林水産業を守る
「食料安全保障基礎支払」の創設
農業の多面的機能を重視し、食料安全保障を強化する農政へ転換。自給率50%を目指し、「骨太の基本法」や「食料安全保障基礎支払」を導入。農地のCO2削減機能活用、鳥獣被害対策、種子法復活、都市農業支援なども進め、農業者の所得向上と地域農業の持続性を確保する。
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世界的な食料危機や気候変動への対応を広義の安全保障として位置付けるとともに、国土、水源、自然環境の保全など、農業の公共的・環境的役割を重視した農政を展開します。防災、水源涵養、自然環境の保全など農業・農地の多面的機能を重視した農政に転換します。農村の維持・活性化に重点を置きます。主要農産物、食料ごとの自給率目標を定める「食料自給基本計画」を策定し、食料自給率50%を実現します。
食料安全保障の強化のためには、国内の生産力を高めることが最重要であり、農業者の視点に立った「骨太の基本法」を制定します。その際、米の需給調整は国の責任で行うとともに、「営農継続可能な農業者の所得向上」を最優先に考え、適正な価格形成に向けた環境整備を消費者の理解を得ながら進めるとともに、「食料安全保障基礎支払」(含「環境加算」「防災・減災加算」)を導入します。農地が持つ炭素貯留機能によるCO2排出削減効果を炭素クレジットとして取引できるようにします。田畑などへの鳥獣被害対策、都市農業支援に取り組みます。種子法を復活させます。JAの准組合員規制には反対であり、地域に根差した「農」を支える人づくりを行います。
水田活用直接支払交付金の要件見直し
水田活用直接支払交付金の「5年に一度の水張り」要件については離農と耕作放棄地が増える原因となり、食料安全保障にとってはマイナスであるため、地域事情に応じて柔軟に緩和します。
兼業農家支援
学校給食のオーガニック化・国産化・食育活動の推進
学校給食のオーガニック化・国産化を進めます。学校給食について、農産物、水産物ともに地産地消を進めるとともに、有機農産物の利用を推進します。遺伝子組み換え食品も学校給食では使いません。栄養教諭の配置など食育活動の推進を図ります。
ふるさとへの帰農支援
夫婦の一方が生まれ育ち、親の住んでいた故郷に帰農する場合、年最大250万円を給付する制度(「夫婦ふるさと帰農支援給付金」)を創設します。「農業次世代人材投資事業」を充実・強化し、農業後継者の就農を強化しつつ、過疎地の活性化を図ります。
飼料の国産化
畜産用飼料の大部分を海外に依存し、国際需給に左右される現況を改善し、安定的な供給を図るため、飼料の国産化を推進します。
地域資源のフル活用
林業の活性化・花粉症対策
国産材の利用促進で林業を持続可能な形に転換し、温暖化防止と林業活性化を図ります。スギ花粉症対策として伐採・植替えや花粉の少ない苗の普及、飛散抑制技術も推進します。
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戦後に造林した木材の多くが伐採期を迎えており、国産材の供給余力は増加している一方、未だ国産材利用率が低いのが現状です。農業用ハウスや畜舎、木質サッシの推進を含め住宅、公共建築物等への木材利用を加速させ、森林資源の有効活用により持続可能で地球温暖化防止に寄与する林業に転換し、国内林業を活性化させます。また、国民の約3割以上が罹患しているスギ花粉症の対策強化を図るため、スギ人工林の伐採・利用・植え替えの促進、花粉の少ない苗木の生産拡大、花粉飛散抑制技術の開発をさらに進めます。
持続可能な水産業の発展
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水産業を取り巻く環境は依然として厳しく、漁獲量の減少・海洋環境の変化・就業者の高齢化・担い手不足等が深刻です。一方で水産業の持続的な発展は、海洋国日本の安全保障上も極めて重要です。再生の為には、漁業者の収益性の向上が不可欠であり、漁業経営の安定化、漁村の維持、競争力強化、養殖業の支援強化、漁業施設の整備・漁港機能増進等に取り組みます。また、水産業に携わる労働環境改善のため、必要な法改正を行います。
ALPS処理水の海洋放出については、継続的なモニタリング、徹底した情報公開、国内外への説明を行うと同時に漁業者の事業継続を強力に支援し、風評被害対策に万全の取り組みを行います。中国の日本産水産物禁輸への対策として即時撤廃へ向けた外交努力とともに、国内消費の促進支援、新規輸出先の開拓、新たな輸出先のニーズに応じた加工体制の強化等に取り組みます。
改正漁業法については、制度の運用状況も含めて、浜の現場の声を聞き、真に必要な見直しに取り組みます。また近年、日本近海で度々発生する赤潮被害等に対する救済制度の拡充と、その発生メカニズムの解明・被害を防ぐ科学技術開発の推進に取り組みます。
家畜伝染病の阻止
アフリカ豚熱(豚コレラ)など家畜伝染病の海外からの流入を水際で徹底阻止するため、検疫探知犬の配置の充実、許可のない肉製品等の持ち込み者に対する上陸拒否など、検疫体制を強化します。
食料・農業・農村基本法改正に当たっての提言
食料安全保障基礎支払い(仮称)の新設と直接支払い制度の整理
農地維持への直接支払い制度(食料安全保障基礎支払い(仮称))の新設
農地面積が継続的に減少し、400万 ha も下回ることとなった危機的な状況であることなどを踏まえ、我が国の食料安全保障の基盤となる農地の維持並びに担い手の確保に資する直接支払いを新設すること。その際、その財源については、既存の農林水産予算に支障がないよう、別枠で用意すること。
既存の直接支払い制度の整理と経営展望等の提示
複雑化した各種直接支払い制度を「食料安全保障基礎支払い」も含めて整理・簡素化し、使いやすくする。中山間地域や作物別に「標準的な農業経営の所得見込み」を提示し、規模拡大に偏らず適正規模を重視。畜産は国産飼料に見合った規模設定を行う。
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- 水田活用直接支払交付金、多面的機能直接支払交付金、中山間等直接支払交付金等の既存の直接支払い制度が複雑化しており、使いづらいものとなっていることから、食料安全保障基礎支払い(新設)も含め、各直接支払い制度の目的や対象・要件・効果等を整理、検証するとともに、申請の簡素化等を進めること。
- 直接支払い制度の整理を通じて、中山間地域・平地別や、経営規模別、作物別に、いわゆる「経営展望」のような、標準的な農業経営の所得の見込み(直接支払いによる所得を含む)を示しつつ、農業者の所得向上に向けた政策を効果的に講じること。その際、規模拡大だけでなく、適正な経営規模を示すこと。特に畜産は、全ての畜種において国産飼料の調達可能量に見合った規模を提示すること。
水田政策の見直しの方向性を明確化
新制度の目的の明確化
水田活用交付金の見直しにあたっては、現行制度の課題を整理し、基本法の趣旨に基づいた新たな方向性を明確にすべき。作物ごとの支援への転換は否定しないが、関係者の合意形成と安定運用が不可欠。
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水田を対象に支援する現行の水田活用直接支払交付金から、水田・畑地を対象に作物ごとの生産性向上等への支援とする新制度へと政策転換する理由、目的を明らかにすること。「水田・畑にかかわらず作物ごと」に、との大きな方向性については反対するものではないが、現行水活の課題・問題点を整理・総括し、改正基本法の趣旨に照らして新たな水田政策見直しの方向性を位置付けるべきである。その上で、関係者の共通認識を形成し、新制度の安定的な運用を確保すべきである。
新制度への移行に伴う影響緩和措置
水田の維持・確保への支援
水田機能を維持するため、水田加算等の支援継続を求める。田畑輪換の推進には、その効果を活かす施策と水利権調整を進めるため国の支援が必要。
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- 新制度への移行によって、水田・畑にかかわらず作物ごとの支援となると、水田を水田として維持していくことの政策効果が失われるため、例えば多面的機能直接支払交付金や、農地維持支払い制度(新設)における水田加算のような形で、水田機能を維持するための支援を行うこと。
- 地力増進効果や雑草防除効果等、稲と畑作物双方にとってメリットのある田畑輪換を進めるために必要な施策を講じること。また、田畑輪換推進のネックとなっている水利権調整を円滑に進めるため、国が土地改良区をサポートすること。
コメの生産・流通政策の検証・見直し
- 昨年来生じているコメ流通の混乱等について、その原因を調査・分析の上、コメの生産・流通・備蓄政策について必要な見直しを行うこと。
- その際、国民への食料の安定供給が農政の最重要の責務であるとの認識の下、主食であるコメが安定して国民一人一人に行き渡るような対策を講じること。
農業従事者の増加と多様な農業者の位置づけを明確化
農業従事者の確保と増加に向けた姿勢の明確化
農業従事者の減少・高齢化を前提とするのではなく、担い手を増やすための明確な姿勢を示し、直接支払いの導入・拡充を含む具体的な施策を講じること。
多様な農業者の位置づけと施策の強化
改正基本法に示された「多様な農業者」の位置づけを基本計画にも明記し、それに応じた支援策を整備すること。
大規模化偏重からの転換と多様な担い手育成
農村人口の減少を招く大規模化一辺倒の政策を見直し、地域に根ざした多様な農業者の育成を重視する政策へと転換すること。
農地面積及び水田面積の確保
自給率目標に基づく水田・農地面積目標の設定
改正農振法においては、「食料の安定供給の確保のための農業生産に必要な農用地等の確保に関する基本的な事項」を定めることとされていることに鑑み、これまでのようなすう勢ベースでの目標ではなく、自給率目標を達成するために必要な水田面積及び農地の総面積の目標を設定すること。
国と地方の連携による農地目標の実現
国全体での確保すべき農地のグランドデザインを描いた上で、各地方自治体における農地面積目標及び水田面積目標が適切に設定され、現場においてその目標の実現に向けて奮起して取り組んでいけるよう、国は適切に指導・調整を行うこと。
多面的機能の維持・発揮等により農村の振興と関連所得の向上を目指す
農林水産省の強いリーダーシップによる地域政策の総合化の推進
- 幅広い関係者との連携により地域政策を総合化し、農業者や地域住民のウェルビーイングの視点に立った地域経済循環の拡大、農村発イノベーション、副業・兼業等多様なライフスタイルの提示、景観や伝統文化等の地域資源の活用を進めていくこと。
- 買物困難者対策として、農村振興の経済面、生活面での取組に組み込むこと。
- 担い手不足と高齢化を踏まえ、中山間地域においてもスマート農業を導入することが可能となる技術開発の推進、通信環境の整備等を行うこと。
多面的機能の再評価
多面的機能直接支払交付金について、多面的機能の価値を再評価した上で拡充するとともに、多面的機能は共同活動だけでなく個々の営農活動によって発揮されるものであることを明記すること。
中山間地域等直接支払いの拡充
中山間地域等直接支払交付金については、「適切な農業生産活動が継続的に行われるよう農業の生産条件に関する不利を補正」との基本法の趣旨を踏まえ、実態を調査した上で、十分な条件不利補正を行うこと。そまた、条件不利補正の支援は、共同活動経費等の支援にあてるのではなく、農業経営に対し支払うものとすること。