質疑者:田村 麻美
AI要約レポート
3行要約
- 田村委員は、零売薬局の規制強化に関する懸念、薬剤師の職能発揮、医薬品の物流問題について、厚生労働大臣に現状認識と今後の対策を質した。
- 薬剤師の職能発揮については、リフィル処方箋の活用が進まない現状や、医師との連携不足を指摘し、登録販売者の活用と試験の均てん化を求めた。
- 医薬品の物流問題では、低薬価品などの流通不採算の実態を指摘し、物流コストの見える化と薬価における反映を求めたが、大臣は現行のルール遵守と必要な施策検討に留まった。
1. 概要
田村議員が、零売薬局の規制、薬剤師の職能発揮、医薬品の物流問題を中心に、福岡厚生労働大臣および医薬局長に対して質問を行い、政府側の見解や今後の対応について質しています。本質疑応答は、医薬品の安定供給と国民の医療アクセス確保という重要な課題に対する政府の取り組みと課題を浮き彫りにすることを目的としています。
2. 主題・主張
田村議員は、零売薬局規制の具体化における関係者への意見聴取の不足、薬剤師の職能発揮を阻害する要因、医薬品物流の不採算性という3つの主要な問題点を指摘し、厚生労働省に対して具体的な対策を求めました。特に、薬剤師の職能発揮を阻害する医師側の行動変容の遅れや、医薬品物流における不採算性の根本的な原因である低薬価品問題の解決を強く主張しています。
- 零売薬局規制に関する関係者への意見聴取の機会の確保
- 薬剤師の職能発揮を促進するための医師との連携強化
- 医薬品物流の不採算性解消に向けた薬価制度の見直し
3. 重要な論点
- 零売薬局規制の具体化と関係者への意見聴取:
- 零売薬局に対する規制強化に関して、解散した日本零売薬局協会に代わる意見聴取の機会をどのように設けるのかが問われました。
- 医薬局長は、幅広い関係者からの意見を聞きながら丁寧に進めるべきと回答しましたが、具体的な進め方は今後検討するとしています。
- 田村議員は、厚労省が当事者の意見を十分に聴取し、実態に即した規制となるよう求めました。
- 薬剤師の職能発揮を阻害する要因:
- リフィル処方箋の活用が進まない現状や、医師への疑義紹介・処方提案が受け入れられないケースがあることが指摘されました。リフィル処方箋の活用状況が0.07%にとどまっている現状を問題視。
- 田村議員は、医師側の薬剤師に対する認識不足が薬剤師の職能発揮を阻害していると主張し、院外処方における薬剤師との連携強化を求めました。
- 福岡大臣は、薬剤師の専門性を生かした職能発揮が重要であると認識し、地域における薬剤師の活躍を推進する方針を示しました。
- 医薬品物流の不採算性:
- 厚生労働省の調査結果で、低密度エリアにおける医薬品供給が流通不採算に陥っていることが示されました。
- 田村議員は、市場実勢価格改定において流通コストが加味されているにもかかわらず不採算となっている現状を問題視し、物流費の薬価における見える化を提案しました。
- 福岡大臣は、流通改善ガイドラインの遵守を徹底する中で、医薬品のカテゴリー別の流通コストや取扱いの負担が大きい製品群といった視点に留意しながら必要な施策を検討するとしています。
- また、逆ザヤ問題について、改定前薬価が上限となっているため物価上昇を反映できないと指摘し、上限規定の見直しを求めましたが、大臣は明言を避けました。
4. 結論と展望
結論
本質疑応答は、医薬品の安定供給と薬剤師の職能発揮を巡る課題が複雑に絡み合っていることを示しました。特に、零売薬局規制の具体化、薬剤師の職能発揮を阻害する要因、医薬品物流の不採算性という3つの主要な問題点について、政府側の明確な解決策が示されたとは言い難い状況です。
今後の展望
今後は、
- 零売薬局規制における関係者への丁寧な意見聴取の実施
- 医師と薬剤師の連携を強化するための具体的な施策の推進
- 医薬品物流の不採算性解消に向けた薬価制度の見直し
が求められます。特に、採算性の取れない薬を作り続けさせている現状を改善しない限り、医薬品の安定供給は困難であるという田村議員の指摘は、今後の議論において重要な視点となるでしょう。
5. 評価
本質疑応答は、国民の医療アクセスを維持するために不可欠な医薬品の安定供給と薬剤師の職能発揮というテーマについて、具体的な問題点と課題を浮き彫りにしました。特に、薬剤師の職能発揮を阻害する医師側の意識改革や、医薬品物流の不採算性解消に向けた薬価制度の見直しは、今後の政策立案において重要な検討課題となるでしょう。本レポートは、医療政策に関わる関係者や国民が、これらの問題に対する理解を深め、議論を促進するための基礎資料として活用できると考えられます。
用語説明
- 零売薬局: 薬剤師が患者からのヒアリング等をもとに「やむを得ない場合」と判断したときに、処方箋がなくても医療用医薬品(処方箋医薬品以外)を対面で販売できる薬局。
- リフィル処方箋: 症状が安定している患者に対して、医師が一定期間内に反復利用できる処方箋を発行する制度。薬剤師が患者の服薬状況を継続的に確認し、医師と連携することで、薬物治療の適正化や患者の利便性向上に繋がる。しかし、実際には医師の理解不足や患者の認知度不足により、活用が進んでいない。
- 市場実勢価格: 医薬品の卸売業者と医療機関・薬局との間で実際に取引される価格。薬価改定の際に、この市場実勢価格を基に薬価が調整される。しかし、物流コストや人件費などのコストが十分に反映されていない場合があり、特に低薬価品においては流通不採算に陥るケースがある。